相続手続きしないとどうなる?放置のリスクと大きなデメリット
- すみれ大橋行政書士事務所
- 7月23日
- 読了時間: 13分

▶︎1. 相続手続きをしないとどうなる?主なデメリットを解説

1.1 相続手続きが後回しになりがちな理由
相続手続きは、突然の出来事のあとに訪れるため、気持ちの整理がつかず、手がつけられないまま時間が過ぎてしまうことが多いです。
中には「時間に余裕ができてからやろう」「まだ誰も動いていないから様子を見よう」
といった気持ちが強くなり、後回しになりがちです。
たとえばこんな場面が考えられます。
葬儀や法要の準備に追われて、相続に手が回らない
親族間での意見の違いが心配で、話を切り出しづらい
手続きの内容が複雑で、どこから始めていいかわからない
特に相続人が複数いる場合、連絡や書類のやり取りも手間がかかるため、先延ばしになりやすいです。
こうした「あとでやろう」の積み重ねが、気づけば大きなトラブルを引き起こす原因になります。
1.2 手続きをしないまま放置するとどうなる?
相続手続きを放置してしまうと、時間の経過とともに多くのリスクが発生します。
放置によって生じる代表的なデメリットには、次のようなものがあります。
相続税の申告期限を過ぎて加算税や延滞税が発生
不動産の名義変更ができず、売却や担保設定が不可能に
預貯金や株式などの資産が凍結され、引き出しが困難になる
相続放棄の期限を逃し、借金まで相続するリスク
相続人同士の連絡が途絶え、話し合いが難航する
こうした問題は、時間が経つほど手続きが煩雑になり、さらに専門的な対応が必要になるケースも増えます。
忙しい日常のなかで「面倒だから後で…」と思っていた手続きが、後々大きな負担としてのしかかってくるんです。
だからこそ、相続手続きは「できるだけ早く・確実に」進めることがとても大事です。
▶︎2. 借金を抱える?相続手続きをしないリスクとデメリット

2.1 借金も相続されるしくみ
相続と聞くと、現金や不動産など「プラスの財産」だけを受け取るイメージがあるかもしれません。しかし実際は、借金やローン、未払いの税金といった「マイナスの財産」も、全て相続の対象になります。
たとえば以下のようなものが該当します。
消費者金融や銀行からの借り入れ
クレジットカードの利用残高
未払いの家賃や公共料金
医療費や介護費用の未精算分
税金や保険料の滞納分
相続人は、これらのマイナス財産を自分の財産で返済する義務を負うことになります。
相続人が複数いる場合も、分担して責任を負う必要があります。
見落としがちなのが、「名義が自分でない=関係ない」と思い込んでしまうこと。
たとえ直接借りた覚えがなくても、法的には被相続人の借金を受け継ぐ可能性があるため注意が必要です。
「知らなかった」では済まされないのが相続の怖いところです。
2.2 相続放棄・限定承認の期限を過ぎると
借金が多い場合に有効なのが、「相続放棄」や「限定承認」といった制度です。
相続放棄:財産を一切相続せず、借金の返済義務も回避
限定承認:プラスの財産を限度に借金を引き継ぐ(マイナス分は免除)
これらの手続きは、被相続人が亡くなったことを知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申立てをする必要があります。
よくある注意点はこちらです。
相続放棄をしても他の財産に手をつけると無効になる
家族でひとりでも放棄しなかった場合、債務の支払い義務が残る
限定承認は相続人全員が一緒に申立てる必要がある
たとえば、葬儀費用の支払いに被相続人名義の預金を使っただけで、「相続を認めた」と判断されてしまうこともあります。
これを「単純承認」といい、放棄や限定承認ができなくなるため、特に注意が必要です。
「相続税の申告は10カ月以内」と思って安心している方が多いですが、借金のリスク回避には3カ月以内というもっと短い期限があることを忘れてはいけません。
2.3 よくある失敗例と対処法
借金に関する相続では、以下のような失敗が多く見られます。
よくある失敗例
「忙しいから」と3カ月を過ぎてしまう
→葬儀や法事に追われ、申立てを忘れた結果、借金も相続することに。
借金の存在を把握していなかった
→後から債権者から連絡があり、すでに放棄できない状態に。
放棄するつもりでいたのに、預金を引き出してしまった
→「財産を処分した」と見なされ、放棄が無効に。
限定承認したくても、他の相続人と連絡が取れず断念
→全員の同意が必要なため、進められなかった。
失敗を防ぐための対策
相続が発生したら、まず財産の「全体像」を把握する
借金やローンの有無を必ず確認(信用情報機関なども活用)
少しでも不安があれば、すぐに司法書士や弁護士に相談
手続き前に、相続財産に一切手を付けない
「よく分からないからあとでやる」ではなく、「分からないからすぐ相談」が失敗を防ぐコツです。
忙しい日々の中でも、借金のリスクを避けるためには、相続発生後の最初の3カ月が勝負です。
たとえ借金がなかったとしても、相続放棄を視野に入れて動くことは非常に重要な選択肢となります。
▶︎3. 預貯金や株式が使えない?相続手続きを後回しにする危険性

3.1 預金の払い戻し権が消える仕組み
被相続人が亡くなると、その時点で名義人の銀行口座は自動的に凍結されます。
これは、不正な引き出しや相続トラブルを防ぐために金融機関が行う措置で、死亡の事実が確認された時点で停止されることが一般的です。
つまり、口座が凍結されると以下の操作が一切できなくなります。
現金の引き出し
公共料金などの自動引き落とし
デビットカードやクレジットカードの決済
インターネットバンキングの利用
特に注意したいのが、生前に家族が生活費などで利用していた共同口座が使えなくなるケースです。預金に頼っていた家計では、急な支払いができず混乱することもあります。
また、払い戻しを受けるには次のような手続きを経る必要があります。
死亡届の提出
相続人全員の確認と署名捺印
遺産分割協議書の作成
印鑑証明や戸籍謄本の収集
これらの書類準備には数週間〜数カ月かかることもあり、手続きを後回しにすればするほど引き出せるタイミングが遅れてしまいます。
「葬儀代くらいすぐに出せるだろう」と思っていたお金が、実際には使えないというケースが非常に多いです。
3.2 株式・保険金・退職金の名義変更放置による影響
相続財産には、現金以外にも多くの金融資産が含まれています。
代表的なのは以下のようなものです。
証券会社に預けていた株式や投資信託
生命保険や医療保険の保険金
勤務先から支給される退職金や弔慰金
こうした資産も、相続手続きをしなければ名義変更ができません。
たとえば株式の場合、亡くなった人の名義では売却や配当受取ができず、相続人の間で分配することも不可能になります。
さらに長期間放置すると、手続きに必要な書類が取得できなくなるリスクもあります。
保険金についても、受取人が「相続人」となっている場合には、相続人全員の同意が必要になります。このとき一人でも連絡がつかないと、手続きがストップしてしまいます。
退職金についても、「一定期間内に請求しないと受け取れない」という会社のルールがあることも。期限切れによる失効リスクも見逃せません。
「今すぐ必要じゃないから」と放置していると、気づいたときには受け取れなくなっていたということもあります。
3.3 日常シーンでの困りごと例
相続手続きの遅れが、日常生活に直接影響を与えることもあります。
たとえば、こんな場面で困るケースが多いです。
生活費の不足
口座が凍結され、日々の買い物や支払いに使えない。結果的にクレジットカード頼みになり、家計が不安定になる。
子どもの教育資金が用意できない
学費や入学金を支払う予定だった資金が使えず、進学手続きが遅れることも。
通院費・介護費用が払えない
高齢の家族のために用意していた預金が凍結され、介護施設の支払いが滞る。
相続人同士での連絡が取りにくい
長期間会っていなかった親族と連絡が取れず、名義変更などが進められない。
税務署や金融機関からの催促
一定期間を過ぎると、税務署から「申告の催促」が届き、精神的負担が大きくなる。
こうした問題は、「もっと早く手をつけていれば防げたこと」がほとんどです。
特に、複数の相続人がいる場合は「誰が動くのか」を明確にしないと、手続きが進まないまま時間だけが過ぎてしまいます。
少しでも早く手をつけることで、日常のトラブルや資産の損失を未然に防ぐことができます。
▶︎4. 相続手続きをしないと相続税の加算税・延滞税が発生するデメリット
4.1 10カ月以内の申告義務とペナルティ
相続税の申告・納税には明確な期限が設けられています。
被相続人が亡くなった日から10カ月以内に、税務署へ申告・納付を行わなければなりません。
この期限を過ぎると、以下のようなペナルティが課される可能性があります。
無申告加算税:申告しなかったことによる追加課税(最大20%)
延滞税:納付が遅れた日数に応じて加算される利息のような税金
特に財産額が高額な場合、ペナルティの金額も大きくなるため、金銭的負担が一気に膨らんでしまいます。
相続税の申告は「知らなかった」では済まされず、期限内に対応することが重要です。
4.2 延滞税・無申告加算税とは?
それぞれの税金について、もう少し詳しく見てみましょう。
延滞税:納付期限から納付日までの日数に応じて発生する。令和6年度時点では年7.3%が上限。早めに納めれば軽減可能。
無申告加算税:期限までに申告しなかった場合に課される。税額に対して15%(重加算時は最大20%)が加算される。
たとえば相続税が500万円だった場合、延滞や無申告で最大100万円以上の加算税が発生する可能性もあります。
これらの税金は、相続人の人数に関係なく、代表相続人が一括で支払うケースが多いため、他の相続人との負担割合の調整でも揉める原因になります。
4.3 よくある注意点とスムーズな対策法
相続税の手続きでありがちな注意点には、以下のようなものがあります。
財産の全体像がつかめず、申告の準備が間に合わない
遺産分割協議がまとまらず、納税資金の準備が遅れる
土地評価や非上場株式など、専門的な査定が必要で時間がかかる
これらのトラブルを避けるためには、次のような対策が有効です。
早めに財産の一覧を作成する
通帳、不動産登記簿、保険証券などを整理し、財産の全体像を把握。
遺産分割協議を先送りにしない
相続人全員と早めに協議の場を設けておくことが大切。
税理士などの専門家に早期相談する
評価や申告書類の作成をスムーズに行い、期限内の対応がしやすくなります。
10カ月という期限は意外と短く、気づいたときにはギリギリということも少なくありません。
早めの行動が、不要な出費を防ぐカギになります。
▶︎5. 不動産の相続登記をしないと後が大変
5.1 義務化の背景と概要
2024年4月から、相続による不動産登記が義務化されました。
これにより、相続を知った日から3年以内に登記を行わなければならないというルールが適用されます。
これまで不動産の相続登記は任意とされてきましたが、所有者不明土地の増加や管理放棄された不動産が社会問題となったことから、法律が改正されました。
義務化によって、以下のような点が変わりました。
登記しないまま放置すると、10万円以下の過料が科される可能性がある
「相続したが使っていない土地」でも、必ず手続きが必要になる
自己の持ち分が少なくても、登記しなければ法的責任を問われる場合がある
この法改正により、「手続きしなくても問題ない」は通用しなくなったのです。
5.2 登記しないと売れない・担保にできない
不動産を売却したり、ローンの担保にしたりするためには、必ず名義を自分のものにする登記が必要です。
名義が故人のままでは、以下のような不都合が生じます。
不動産を売却したくても、買主が契約できない
リフォームや建て替えのためのローン審査が通らない
土地の一部だけを分けて利用したいのに分筆ができない
また、相続人が複数いる場合、誰がどの不動産を相続するかが決まっていないと、全員の同意を得る必要があります。一人でも反対すると、売却や利用が進まない状況になるのです。
手続きを先延ばしにしてしまうと、実家や土地を「使えない資産」にしてしまう可能性があるので要注意です。
5.3 権利関係が複雑化する問題と共有トラブル
相続登記をしないまま何年も放置すると、次第に相続人が増えて権利関係が複雑化していきます。
これを「数次相続」といい、次のような問題が生じます。
相続人の子や孫などが増え、話し合いがまとまらなくなる
行方不明者や意思確認ができない人がいて、手続きがストップ
全員の同意が得られず、売却や分割が不可能になる
共有名義のまま放置すると、「この土地どうする?」という話を相続人同士で何十年も繰り返すことになりかねません。
相続登記は後回しにせず、早めに済ませることで後のトラブルを大きく減らせます。
▶︎6. 相続手続きを放置しないために今できること
6.1 今すぐ始めたい相続手続きのチェックポイント
相続手続きを後回しにすると、多くのリスクやトラブルを招きます。
大切なのは、「何から手をつけるべきか」を把握し、できることから着手することです。
以下のチェックポイントを確認しながら、手続きを進めてみてください。
被相続人の死亡日を確認したか
相続人が誰なのか戸籍で確認したか
相続財産(預貯金・不動産・負債など)を把握しているか
相続放棄・限定承認の判断期限(3カ月)を把握しているか
相続税申告の有無と納付期限(10カ月)を確認しているか
不動産の相続登記について準備が進んでいるか
どれか1つでも「まだ手をつけていない」があるなら、すぐに行動に移すべきタイミングです。
6.2 専門家に依頼するメリットと注意点
相続手続きは書類の収集、法的判断、相続人間の調整など、非常に多くの要素が絡む複雑な作業です。専門家に依頼することで、負担を大幅に軽減できます。
主なメリットは以下の通りです。
書類の不備や申告漏れなどを防げる
手続きが早く進み、期限内に対応できる
相続人間の調整役として第三者が入ることでトラブル回避がしやすい
ただし、相続にはさまざまな分野が関わります。
税務に強い税理士や法的な争いに対応できる弁護士など、必要に応じて連携が重要です。
行政書士は、相続人の調査や書類作成、不動産の名義変更など、手続き面での実務を幅広くカバーしています。
また、費用についても事前に見積もりを取り、依頼内容を明確にしてから進めることで安心です。
6.3 サポートを受けてスムーズに進める方法
自分ひとりで手続きを進めるのは不安という方は、相続に強い専門家のサポートを受けることがスムーズに進める近道です。
最近では、相続相談に特化した窓口や、オンラインで書類収集・申請まで代行してくれるサービスも増えてきました。
サポートを受けることで得られる安心感には、次のようなものがあります。
「何を」「いつまでに」「どうやって」進めるかが明確になる
自分がやるべき部分と任せられる部分が分かれるため、時短につながる
忙しい人でも無理なく進められる
不安を抱えながら進めるよりも、早めに相談することで精神的な負担も減ります。
▶︎相続手続きを後回しにしないために、今すぐ相談を
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